基本的流儀2

何かの参考にはならない

悪意

今日は暑くていい天気だ。なぜかこんな日に自転車を漕いでいると昔のことを思い出したりする。

 

あれは専門学校の時だった。専門学校というのは、入学してから程なくして「オリエンテーション」という名の合宿みたいなのに参加することになる。今にして思えば最初の気合いかけ兼友情を育む狙いがあったんだろう。たしかにいきなり授業をするよりはマシなのかもしれないが、なかなかに面白い事件というのは起こるものなのだ。


僕らはホテル的な所に連れて行かれ、研修を受けた。1日目が終わってご飯が済むと、部屋に戻って雑談タイムだ。ここでなかなかの発言が飛び出した。

なんと、Yくんがクラスの女子、Eさんのことが好きだと言い出したのだ。突然の謎のカミングアウト。僕も含めその場にいた数名は一瞬答えに詰まったが、とりあえず話を聞くことにした。
聞けば入学してすぐぐらいにはもう好きになってしまったらしい。 知り合ってすぐ好きになるなんてすごいなあなんて僕は呑気に聞いていた。語ってるうちにYくんも盛り上がってきたのだろうか、話は告白するかどうかという話に発展していた。ちょ、ちょっと待つってばよ。それはいくら何でも早いのではなかろうか。

しかし部屋の中では無責任に彼を応援する雰囲気が漂い始める。

「たしかに、いい感じで話してるよなあ」
「多分向こうも気があると思うよ!!なんか向ける笑顔が周りと違うぜ」
「そ、そうかな!いけるかな!」
「いけっべや〜!もう行くしかない!」

んなわけねえだろうと僕は思ったが、「ああ〜そうかも」とか言っておいた。

というのも、周りは完全にYくんが告白する流れに持って行こうとしているのだ。彼の淡すぎる恋がどうなろうとそんなことはどうでもよく、告白して見事玉砕する彼の姿を見たがっていた。


「今から部屋に乗り込め!」
「外に呼び出して告れ!」
「う、う〜んどうしよう〜」

いともたやすくおこなわれるえげつない提案。結論から言うと彼は合宿後に告白してフラれていた。

人は善意に見せかけてとんでもない悪意を持ってることがあるので注意しましょう。

ちなみにそのYくんは夏の終わりくらいには「スカ○ロ野郎」とかいう不名誉極まりないあだ名をつけられていた。彼は元気だろうか。